• Elliot Cooper

コーウェン ムーンライト ソロ12時間レース

Updated: May 23

怠けるのは嫌いだ。だから僕はカレンダーを予定で埋める。朝のヨガの時間が取れなさそうなら、もっと早く起きるようにする。走り終えた後にまだ時間があれば、もう少し走ってみる。でも今日は、午前10時でもまだベッドの中にいる。今日予定している事を全部考える。たっぷりヨガをして、朝ごはんを食べ、朝ごはんを食べたらすぐ昼ごはんを食べる。で、ギアのチェックをして、また少し食べて、家を出る。午後4時に。まだ時間があるからまた目を閉じる。怠けるのは嫌いだけど、今日怠けているのは作戦なんだ。僕は、うたた寝すればするほど成功率が上がるという、不思議なシナリオの中にいる。そう、起きて、仕事も用事も運動もしなければ、なんていう心配を全くせずに僕はベッドの中にいられる。ああ、最高。

今夜はコーウェンムーンライターの日だ。今週末に何をするかを友達に言った時、彼は、ウルトラランナーならお馴染みの、あの顔つきで僕を見る。実際にそれがどんな事かを想像した後に、軽く顔をしかめて、一体何の意味があってそんなことをするの?と云わんばかりの、あの顔だ。僕は、彼が何を考えているかを想像してみる。僕が月明かりの荒野の暗闇の中で、大鍋を掻き回すみたいなことをする代わりに、走っているのを想像してるんだろうか?あまりにも長く運動しているから、その運動している人の身体は錯乱状態になってしまうと考えているんだろうか?あるイカれた人が、普通の人ならもう止めて家に帰ろうと考えるよりもはるかに長い間走り続け、その人の身体がもう無理と悲鳴を上げて吐き気を催し始めるまで走り続けることを、彼は想像できるだろうか?そして、低血糖で気分が悪く、足はもうコントロールが利かず、消えそうなヘッドライトに照らされてよろめく姿まで想像しているんだろうか?みんな本当にありえない事を想像するものだ。夜に森の中を走るのはただ楽しいだけなのに。僕は今週ずっと楽しみにしていた。

僕は、少なくとも100キロは走れると考える。110キロ行けたらいい。順位は全く想像がつかない。地元でのレースの経験も、こういうことをする地元のランナーとの交流もまだあまりない。このレースは今回初めての開催のため、前回のレース結果はなく、地元のスターが誰であるか、参加者がどれだけのラップを走ったのかを知ることはできない。

実を言うと、のんびりと準備を進めている間、僕は重要なことに気づかないふりをしている。レースのための十分なエナジーバーがないことだ。あるのはトレーニング中に試したことのないものだけ。マグネシウム塩分タブレットはあるが、レース用に持ってきたのはカフェイン入りのものだとあとで気がつくことになる。これは吐き気を催す原因になる。少なくとも眠くはならないが。そして何が起こったのかよく分からないが、レースイベントに4時半に到着する予定が狂う。代わりに、5時15分に到着し、何とか平静を装う。と同時に、混乱の中に陥り始める。ギアチェックをパスしたが、主催者の緊急連絡先の番号を自分の携帯に登録しようとした時に、携帯が見つけられない。残りの貴重な時間が荷物入れの中をくまなく探すことに使われ、パニックになりはじめる。僕は全ての行動を止め、深呼吸をし、やっと荷物入れの下のほうを見る。携帯だ。レース主催者のパムがすでにマイクをもってレースのブリーフィングをしている。でも僕はゼッケンをつけ、服を着替えないといけない。部屋の後ろで、緊張で手が震えながらも、奇跡的に安全ピンで自分を刺すことなくゼッケンを短パンにつけ終わる。そしてTシャツも着替える。ブリーフィングは何一つ耳に入ってこない。荷物入れのチャックを閉め、それをホールの片隅に置き、間違ったドアから出る。「他の選手は?」また次のパニックに襲われる。

戸惑っている僕を見て、パムがホールを通って戻るように案内してくれる。そして僕はトリプルレース(3周)を走るスコット・ティーの隣に並ぶ。ここで僕たちは握手なのか、フィストバンプかどちらをすればいいのか分からない状態になる。僕はまだこのフィストバンプに慣れておらず、互いに手のひらを広げたり拳を握ったりを繰り返して、僕が拳を握って待ち、彼が手を広げ、何とかフィストバンプが完了。ちゃんと覚えていないが、カウントダウンがあり、6時になって僕たちはスタートする。やっとリラックスする。何とかなるもんだ。

このループはウォンボイン消防署からスタートし、ビトゥマンまでしばらく下り、その後右へ曲がって砂利道へ入る。丘を越えると左へ少し下り、右のシングルトラックへ入る。あちこち曲がり、木をよけ、木の間を通り、時々深い水溜りをよけ、ずっと続くアップダウンアップダウンの道だ。このセクションはローラーコースターのようで、機敏に動かないといけない。半分くらい過ぎたあたりにタイムゲートとエイドステーションがある。ボランティアの人たちはそこに一晩中いて、水や甘い物、ポテトチップスを用意してくれている。甘い物の隣にヘッドランプを向けると、そこにはジェルもいくつかある。これは甘い物ばかり食べ過ぎた時にはすごく大事なものになってくる。

徐々に暗くなっていく中で、僕はマイケル・トンプソンの隣にいることに気がつく。このレースにはマイケル・トンプソンが二人いる。二人とも数週間前のBush Ultra Marathonに参加していた。こちらのマイケル・トンプソンはスカイブルーのショーツに履いている。彼のウエアはいつも明るい。「マイケルだよね?」「ブッシュ ウルトラはどうだった?」と話しかける。「うん、走り終えたよ。」「今日はどれくらい走りたいと思ってる?」と僕が尋ねる。「70キロ行けたらいい。ブッシュ ウルトラより行きたいと思ってるから。もしそれができたら、Sri Chinmoy105kmレースにトライしたいんだ。」僕はそのレースを走ることに決めたと伝える。多分またそこで彼と会うだろう。こういうレースに喜び勇んで出る人はそんなに多くないから、こういうイベントに行くと、いつも同じニッチなグループと会うことになる。キロ5分ペースは彼のレースプランではないから、彼は、先にどうぞと促し、僕は先に行く。

最初の数ラップは早く終わる。全ては順調だ。ただ、一つだけ問題がある。必須ギアである反射材ベストについている硬いプラスチックバックルが、走る度に僕の胃の辺りで跳ねるため、気分が悪くなる。バックルを持ち上げ、それをトレランリュックのストラップに巻きつける。これによって、新たに2つの問題が出てくる。反射材のストラップが肩の辺りで緩くなり、ずり落ちるようになる。そして、バックルは今度は胸骨の辺りで跳ね始めて、これはさっきより悪い状態になる。この状態で3ラップ我慢したが、トレランリュックを反射ベストの外側に背負うことで問題は解決。

5ラップ目でマイケルに追いつく。シングル、ダブル、トリプルを走る選手のほとんどがコースからいなくなった今、自分や彼の順位がどれくらいか全く検討がつかない。「がんばれ!チーム!」とソロの選手を抜くときに応援される。僕はチームでは走っていないんだけれど。今は、暗い中に僕だけがいて、時々誰かを追い越す。残りのレースでは僕がコースにいる間、誰にも抜かれることはなかった。5ラップ目が終わった時、マーティン(レースタイムキーパー)が僕が1位であると言う。

6ラップ目の10時半ごろ、グーグルハングアウトのチャイム音がする。日本にいる睦美からのメッセージだ。スタート前に彼女に電話するつもりだったが、パニックの最中で出来なかった。じゃあ今かけたらいいのではと思いつく。こんな会話を交わす。

睦美: おっ、走ってる?

エリオット: うん。よく分かんないけど、今、一位らしい。

睦美: 本当?(笑う)

エリオット: うん、そう言われた。今日、何を食べた?

睦美: 味噌汁。

エリオット: いいな!味噌汁を食べたい。エイドでは蛇とポテトチップスしかない。

睦美: 蛇とポテトチップス?

エリオット: そうだよ。蛇をもう一本食べたら、吐いてしまいそう。一年間ぐらい蛇を見たくない。

睦美はまだしばらく起きているというので、僕はまた数ラップ後に電話すると伝える。そして暗闇の中を前に進む。暗闇が、僕のほうへ進んでくる感じがする。7ラップ目は最悪だ。僕はこのレース中に摂取した糖分を全て吐き出して、何か他のものを身体に入れたかったが、残っているのはプロテインバー1本だけだ。これではもう1ラップもままならない。僕は歩けるところは歩き、ゲップをし、時々吐くためにとまる。消防署に戻る道すがら、そこから出てくる他の選手に励ましの言葉をかける。どちらかというと自分を励ますために。ほとんどの選手は何も言わない。みんな何を聞いているんだろうと思う。

消防署に着き、中に入って食べることにする。レンズ豆のスープ、かぼちゃスープ、ライスプディング、どれもめちゃくちゃ美味い!外に出て、出来るだけ早く食べ物を下そうとするが、熱いので、時間をかけて食べるようにする。喉に火傷した感覚があるまま、進み始める。でも全然気にならない。さっきより断然気分が良くなり、睦美に電話することにする。

睦美:  今はどんな感じ?

エリオット: さっきまではひどかったけど、レンズ豆スープを食べて元気になった。

睦美:  レンズ豆スープ?

エリオット: そう、蛇はもう嫌だからデポに入ってレンス豆やかぼちゃスープ、それからライスプディングもたべた。

睦美: え?スープやプディングがあるのになんで蛇を食べたの?

エリオット: まぁ、そう言えばそうだね。

全てが順調だ。その後何周も何周も走って、最後の1周の前にスープを食べるために止まる。

11ラップに向かう前、寒さに備え、タイツを置き荷物から取り出す。1キロほど行った頃に、とても寒いことに気がつく。やむを得ず、その公道の真ん中で靴と短パンを脱ぐ。僕は変態じゃないと考えながら。タイツも短パンも靴も履いて出発。また気分が良くなる。制限時間内に進める距離は、このラップともう1ラップなのは分かっているので、それを自分の目標とする。天の川がとてもきれいでヘッドランプの明かりを消し、夜空を見ながら走っていると、後ろから車が近づいてきて、僕の後ろで止まる。その車のハイビームのライトが僕の周りの全てのものを消し去ってしまう。その車はまた、ライトの明かりに慣れきっていない僕のほうまで近づいて来る。そしてドライバーが「曲がる場所を通り過ぎているよ。」と話しかけてくる。パムだ。「どうして見過ごしたの?」「いや、分からない。」と僕。首をかしげる。そして戻り始める。僕の後ろをついて来ていた選手に向かって走っていると、逆送する僕を見て彼女は驚き「こんにちは」という。「僕たち、曲がらないといけないところを曲がり損ねているんだ」と僕が言う。そして少しの距離を戻り、その曲がり角を見つける。パムがあそこで来てくれて良かった。超能力者みたいだ!

朝の5時に11ラップ目を終える。今はエネルギーがあまり残っていないが、補給する時間はない。ソフトフラスク1つに水を入れ出発。この最後のラップは、まるで最初のラップのように走らないといけないのは分かっている。暗い中をまた走りだす。このレースが始まってから11時間以上が経っているが、僕の走りはまた、キロ5分ペースのちゃんとしたフォームで上り坂を登る。砂利道に入り、登りきったところでパムが「あなた、チーム!?」と僕に叫ぶ。彼女は多分100キロに到達するであろうリレーチームのメンバーを待っているんだろう。「いや」「僕だけです」と答える。僕は左に曲がり、そして最後となる、右手にあるシングルトラックに入る。6周回以来初めて、倒木を飛び越え、スイッチバックを機敏に曲がり、上り坂を走って登る。止まらない。コースの中間地点の場所にあるライトを見たときに僕はそう叫ぶ。「僕は止まらないよ!」「何番?」と険しい声がする。「16」と僕。「いちろく」と返事がくる。「ここにいてくれてありがとう!」とエイドステーションを曲がる時に伝え、下り坂でスピードを上げる。このシングルトラックのセクションは、最初のラップでは短く思えた。その後徐々に長く感じてきた。でも今はまた短くなった。僕は自分の身体を限界まで押し、呼吸は荒くなる。シングルトラックから、パムがチームレースの100キロを待つ砂利道に飛び出る。ここで何か会話があった気がするけれど、覚えていない。覚えているのは自分が走っていることだけ。僕には自分の激しい呼吸が聞こえる。まるでザック・ミラーが 2016年のTNF耐久チャレンジで勝った時の映像みたいに(僕のはこれより全然かっこよくないバージョン)。

このラップはどうしても終わらせたい!坂を駆け下りている時に朝日がすごく綺麗なのに気づく。一瞬、ここで止まって日が昇ってくるのを見るべきかと考える。が、すぐに制限時間の6時までたいして時間が残っていない事実と、自分の荒い呼吸の音に引き戻される。今、アスファルトの道路を走っていて、ゴールまですぐであること以外考えられない。僕は角を曲がり、ゲートをくぐって制限時間3分前にゴールする。

目標としていた走行距離100キロには届かなかったけれど、3位だ。そしてソロで走った選手の誰一人として僕の走行距離を超えなかった。悪くない。このイベントを開催してくれたウォンボイン消防署、パム、マーティンそしてボランティアの人たちに感謝。来年もまたこのレースに挑戦するつもりだ。100キロを目指して。


A WORD ABOUT STEPTEMBER (終了)

僕の9月の努力は、このレースへの参加から始まりました。 The Steptember fundraising driveでは、脳性まひの人達を助けるための募金活動をしており、この活動への参加者は、9月4日から10月1日まで、一日1万歩を歩くことになっています。僕は、チーム「4LeftFeet」のキャプテンとして、毎日1万5千歩を歩き、この期間の前後に、Kowen Moonlighter 12時間レースと、Sri Chinmoy 105km ウルトラ (10月7日開催) を走ると決意しました。

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